「10900円」と美談の裏側

sep.10th thu. 2026

「10900円」と美談の裏側——南城市の投票立会人に群がる学生たち

半日座りっぱなしの投票立会人 それでも学生が応募する理由 南城市で続々と応募 期日前の32人枠中21人占める

南城市の期日前投票立会人の枠(32人)のうち、過半数の21人を学生が占めたというニュース。

報酬は1日1万900円程度。朝から夕方、あるいは昼から夜までの半日近く、基本的にパイプ椅子に座って投票の様子をじっと監視する。スマホを弄るわけにもいかず「退屈との戦い」という地味さではあるが、特別なスキルも体力も使わずに1万円オーバーが手に入るなら、タイパやコスパに敏感な今の学生が殺到するのもよく分かる。

メディアの出口調査バイトなんかもそうだが、日給1万円〜1万2000円前後の高時給で出回る「選挙系単発バイト」はいつの時代も若者に人気だ。

記事を読めば「社会勉強になる」「選挙の仕組みが分かった」「地域貢献の実感がある」といった、実に真面目で健全な学生たちのコメントが綺麗に並べられている。

だが、この手の記事を読むたびに感じるのは、報道としての「事実」と、新聞記者が作り上げた「演出」のズレだ。

冷静に事実(ファクト)だけを切り出せば、「南城市の立会人枠に学生が21人応募した」「日給は1万900円である」という、ただそれだけの話にすぎない。

にもかかわらず、紙面では「若者の政治参加」や「社会貢献に目覚める学生」といった綺麗なストーリーへ強引に落とし込まれている。取材で「そりゃ10900円の報酬が目当てですよ」と本音を言われても、そのまま書いたのでは記事として格好がつかない。だから記者が欲しがる「模範解答のようなコメント」を引き出し、それを前面に押し出して美談へと仕立て上げるわけだ。

かつては地域の自治会長や長老たちの名誉職だった投票立会人が、いまや「効率よく稼げて、ついでに社会参加した気分も味わえる一石二鳥のバイト」として学生に消費されている。

若者の政治離れが叫ばれる中で、10900円の報酬を目当てに集まった若者たちと、それをわざわざ感動的な社会勉強ストーリーに改変して報じる新聞メディア。事実の報道という顔をしながら記者の願望や独断が透けて見えるその白々しさも含めて、実に現代的な皮肉が詰まったニュースと言えるな。

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